

(作:Goodwillメンバー/イラストレーター 半田 智穂)
オランダに来てから湿疹が!原因は?
オランダに来てから急に肌がかゆい、腕や脚にカサカサした湿疹ができた、夜布団に入って温まると余計かゆくて入眠の妨げになる、と訴える日本人は少なくありません。もちろんアレルギーや内臓疾患の症状である可能性もゼロではありませんが、特別心当たりがない場合は「乾燥性湿疹」をまず疑うのが合理的です。
原因はさまざま
原因は乾燥や刺激により肌のバリア機能が落ちてしまうこと。暖房が欠かせない冬は空気も乾燥しがちですし、シャワーやお風呂の水が硬水であること、体を洗う際に慣れない現地の製品を使うこと、生活スタイルの変化、食生活の変化やストレス…など、様々な要因がオランダ生活において肌が乾燥したり、バリア機能が落ちたりする原因になりえます。
そうでなくとも、加齢や生まれつきのアレルギー体質(アトピーの傾向の場合も)などによる肌トラブルが刺激によって表面化することも。
治療
まずは保湿とバリア機能の強化が第一ですが(保湿剤に関して以下のケン先生のコラムをぜひご覧ください)、かゆくてどうしようもない、赤く湿疹になってしまっているというような場合には、ホームドクターでステロイド剤を処方してもらうのも手です。
怖いイメージもある薬ですが、上手に使えば心強い味方です。かゆみと炎症を止めてしまえば、痒いからかく、悪化するからさらに痒いという悪循環を断ち切れます。
ここでミソは、まずはお薬だけ塗ること。
根治にはもちろん肌の保湿と強化がとても重要ですが、保湿により熱や汗がこもることでさらに痒くなってしまうと、お薬が効く前にまた掻いてしまったりしかねません。
お薬を塗って最低1時間は待って、かゆみが静まってから保湿クリームを塗りましょう。
また、ステロイド剤と一言で言っても強度やタイプなど数えきれないほどの種類があります。
お医者さんは湿疹のある部位や状態によって最適と判断した治療を処方してくれますが、湿疹の原因物質を患部から特定するのは意外と難しく、実は一発でぴったり合うお薬だけを出すというのはなかなか難しいというのが事実。
またオランダの医師は概して患者を薬に依存させることを好まず、処方するとしてもマイルドなお薬から出してみる傾向があります。
一度目の受診で完治しなくても、あきらめる必要は一切ありません。肌トラブルは長いお付き合いになるケースが多く医者も慣れています。
遠慮なく再受診して、次のステップとして何ができるかたずねましょう。
希望や不安があれば、「副作用が心配でなるべく薬は使いたくないが、安全性と危険性について意見を聞かせてほしい」「何週間試してダメだったら再受診すべきか」などその場で納得するまで訊いてみてください。
保湿クリームに関しては多くの場合ステロイド剤とともに油分の多い医療部外品のクリームを処方してもらえますが、薬局で購入するとしたらいわゆる「ニベア青缶」のような油分が多くこってりしたクリームが適しています。
おしゃれで肌に伸ばしたとたんにスッと馴染むローション的なクリームはそもそも水分が多いので傷ついた肌にしみることが多く、馴染みをよくするために添加されている化学物質がかえって肌を乾燥させてしまったり香料が刺激になったりする場合が多く、この場合の保湿にはお勧めできません。
ドクターによる日本とオランダの水質の違いの理由、乾燥性湿疹の治療などの解説はこちら!
予防
保湿ケア以外に日常生活に取り入れられる工夫もたくさんあります。
①空気の保湿
家の中(特に寝室)の湿度を保つことにもとても意味があります。
加湿器で部屋の湿度を50-60%に保てればベストですが、寝る前にヒーターに濡れタオルや脱水後の洗濯物をかけるだけでもかなり違います(安全面や、結露によるカビなどには十分ご注意ください)。
②食べ物や水分補給
体の中からも乾燥しないよう、冬でも水分補給を忘れずに。またタンパク質やビタミンと言った肌をサポートする栄養素、魚やナッツに含まれるオメガ3なども心掛けて摂りたいです。
③物理的な刺激を避ける
また、肌を刺激する物理的な要素を避けることも大切。
衣類の素材もウールなどのチクチクする素材や、ナイロンやポリエステルなどの汗を通さない素材は直接肌につけず、コットンやシルク、竹素材などの柔らかく吸水性の良い素材で肌を包み、その上から暖かい服を着ましょう。
最後に、汚れと一緒に肌のバリア機能もどうしても落としてしまうのが日々のお風呂やシャワーの時間です。基本的には「皮脂を落としすぎない・お湯はぬるく短時間なほど肌への刺激が少ない」が鉄則です。
石鹸を肌にやさしいものに切り替える、極端な場合は使わないなどが推奨されることもありますが、オランダ人の医師は乾燥性湿疹を持つ患者さんには「冬であっても毎日入浴はせず、週に何度かぬるいシャワーをさっと浴びるだけにする」といったアドバイスをすることも。これはお風呂好きな私たち日本人にはなかなか厳しいと感じますが、少なくともお風呂上りに肌が乾く前に保湿を心掛けたりすることはできるのではないでしょうか。
子どもの場合などは特にかゆみとの戦いは辛いものですが、多くの場合は丁寧に保湿ケアをしているうちに肌が強くなって症状が出にくくなっていきます。寒くて暗くて乾燥したオランダの冬、どうぞ心も体も、そして肌も、無理せず気長にいたわってあげてくださいね。
私たちGoodwillもサポートできます!
「今すぐ受診するほどではないが対策を知りたい」「医師にどう説明すればいいか」など、ご相談があればいつでもお気軽にGoodwillに無料でお問い合わせください!
zalf>crème>lotion(蘭、左から油分の多い順)…軟膏>クリーム>ローション
Rash(英)…赤みや腫れのある肌トラブル一般
Eczema(英)…湿疹。慢性的でかゆみが強く、赤い点々状の症状が現れる。関節内側などにできがち
hives(英)…蕁麻疹。アレルギー反応などで一定の範囲に急に現れ、突然引くこともある赤いふくらみ。
“I have been getting this eczema every winter since I came to the Netherlands ○ years ago. It becomes especially itchy at night when I get into bed, and it is very uncomfortable until I fall asleep.”
(〇年前オランダに来てから毎年冬になるとこの湿疹が出ます。夜ベッドに入ると特に痒く、入眠するまで非常に不快です)
“I have the impression that steroid medications can have heavy side effects. Could you share your opinion on this? How many times a day, and for how many days, would you say it is safe to use them?”
(ステロイド剤は副作用が怖いイメージがあるのですが、先生の意見を少し聞かせてもらえますか?一日に何回まで、何日くらいまでなら安全と言えるでしょうか?)
“I would prefer not to use steroid medications if possible. Could there be other options available? Do you have any advice on things I should keep in mind in my daily life?”
(できればステロイド剤を使いたくないのですが、他にどんな選択肢がありますか。日常生活の中で心掛けることについてアドバイスはありますか)
“How long should I try this medication before coming back to seek further advice?” (それをどれくらいやってみてから(まだ治らなかったら)、再診に来るべきですか?)
(文:Goodwillメンバー ウルセム幸子)
皮膚は私たちの体の中で最大の「臓器」。
いつも多くの有害物質、ウイルス、細菌にさらされており、強い再生能力がある一方、特定の環境に長期間さらされるとトラブルが生じることも。
乾燥やかゆみ、腫れ、ひび割れ、または鱗状に皮膚がはがれるなどの「乾燥性湿疹」の症状に悩む人も少なくありません。
オランダと日本の水道水の違い・乾燥肌との関係
オランダに来てから肌が乾燥する主な原因の一つは、オランダの水道水が硬水であることです。
オランダの水道水はほぼ地下水から作られており、硬水(カルシウムやマグネシウムを多く含む水)が多いのが特徴です。オランダの土壌は過去に海底であったため、地層に貝類由来の石灰を多く含みます。
一方、日本の水道水は、世界保健機関(WHO)の基準で「軟水」または「やや軟水」に分類されます。
みなさんもご存じの通り日本は2/3が森林と山地に覆われており、水が山から海へ急速に流れ落ちるため、岩石から鉱物を吸収する時間が短いです。
また、日本の土壌は主に火成岩で構成されており、石灰岩のような鉱物を多く含む岩石と比べてミネラルが少ないため、水道水は一般的に軟水になります。
このようなわけで、オランダで肌の乾燥が気になる場合は、ご家庭にフィルターを設置して水道から軟水が出るようにするのも一つの手段です。
工費は約3000ユーロ程度と決して安くはありませんが、一度インストールすれば肌や髪にやさしい水が使い放題です。
乾燥肌の他の原因と対策
また意外とスキンケア製品の過剰使用も乾燥肌の原因になる場合もあります。
特に冬場には「保湿しなければ」と不安になりがちですが、不必要にぬりすぎると肌が適応力を失い、乾燥に弱くなるようなことも起こりえます。一部の保湿剤に含まれる化学物質や添加物が湿疹を悪化させることも。
成分表示を確認し、信頼できるスキンケアブランドを選び、必要に応じて専門家のアドバイスを求めることが重要です。
乾燥性湿疹の治療
乾燥性湿疹が気になるとき、まずはステロイドが入っていない製品をお近くのドラッグストアで購入して試してみることをおすすめします。油脂分の多さに応じて以下の3つのグループに分類されます:
- クリーム(Crème)
- セトマクロゴールクリーム(Cetomacrogolcrème)
- ラネットクリーム(Lanettecrème)
- 油脂分の多いクリーム(Fatty Crème)
- ワセリンセトマクロゴールクリーム(Vaselinecetomacrogolcrème)
- ワセリンラネットクリーム(Vaselinelanettecrème)
- 軟膏(Ointment, zalf)
- 冷却軟膏(Koelzalf、Unguentum Leniens)
- セトマクロゴール軟膏(Cetomacrogolzalf)
- ラネット軟膏(Lanettezalf)
- パラフィン・ワセリン(混合軟膏)
これらの製品を1日2回以上、特にシャワーや入浴の後に塗るのがおすすめです。
特に乾燥やかゆみが気になる部分は丁寧に保湿しましょう。肌質や使い心地の好みに合うものを複数試してみて、効果があるものを見つけてください。
2週間を目安にケアしても症状が改善しない場合は、かかりつけ医(huisarts)に相談してください。
(文:Goodwill代表 タナカケン)
(訳:Goodwillメンバー ウルセム幸子)
- 文:Goodwill代表 タナカケン
- 文・訳:Goodwillメンバー ウルセム幸子
- イラスト作画:Goodwillメンバー 半田 智穂
- WEBデザイン・編集:チューリップデザイン