(作画:Goodwillメンバー 半田 智穂)
ホームドクター(かかりつけ医)探し・登録・変更A to Z
オランダに住み始めたら、なるべく早くしておきたいのがホームドクター(かかりつけ医)に登録すること。
オランダは特にホームドクター制度が厳しく、自分が登録したかかりつけのお医者さんから、もしくは経由でなければどんな医療サービスも受けられません(ベルギーは現在制度の過渡期で、まだ大きな病院でも直接の予約を受けてくれるところもあります)。
健康保険の契約ができたら、さっそく行きやすい場所にある診療所を探します。ぜひ、不調が出て医者にかかる必要に迫られる前にしておきましょう!
近所にある診療所(ホームドクター)を探す
Zorgkaartなどのサイトで家の近所にある診療所を探す、もしくは「huisarts XXX(街の名前)」で検索したり、Google Mapsなど地図アプリで地域の「huisarts」を検索する。
診療所(ホームドクター)にコンタクト
最もよさそうな診療所(※TIP1・TIP2参照)にコンタクトを取り、現在新規患者を受け付けているか確認。
OKならば登録や病歴の共有などのため一度来院するように言われます(どこの診療所も一杯で登録できない人も増えています。ぜひ以下のケン先生のコラムもご覧ください)。
登録のために来院する際、どんな書類が必要か訊いておきましょう。
BSN番号、身分証明書(パスポートや居住許可証、IDカードなどのうち一点)、健康保険の契約が分かるもの(カードやアプリなど)などが一般的です。
住所の証明になるものを求める診療所もあり、銀行や不動産業、市役所など発行の住所証明があれば確実ですが、たいていの場合病院や市役所などの公的機関から自宅に届いた住所つきのお手紙で十分です。
病歴などを全て口頭で説明するのが面倒に感じる方は、病歴や現在の体調、服薬中の薬などをざっと英語(蘭語)で書きだしたメモを持っていくのも便利です。
診療所(ホームドクター)登録完了!
これが終われば晴れてそのかかりつけ医の「担当患者」です。
不調が出たらコンタクトを取って、受診の予約をしましょう。
登録したかかりつけ医が合わない!
登録したかかりつけ医が合わない、思ったよりアクセスが悪いなどと感じたら、いつでも変更できます。
別の診療所を見つけ、新規登録を受け付けてくれることを確認したら、カルテを転送してもらえるよう現診療所に変更することを連絡しましょう。
理由を言う必要はありませんが、もし訊かれたら「利便性(conveniency)」で十分です。こちらは患者です。遠慮する必要はありません。
また、保険会社によってはかかりつけ医の変更を報告する必要があります。
オランダ医療の現状・受診の裏ワザなど、ここでしか読めないケン先生の解説はこちら!
TIP1
かかりつけ医を決める際には、オンラインの口コミ、近所の人への聞き込みなどを大いに参考にしましょう。
ただ担当医師や受付の人たちが流暢な英語で対応してくれるか、診療所が清潔で居心地がいいか、アクセスがいいかなど、出向かないと分からないこともあります。
空き状況の確認を口実に一度訪問してみるのもいいでしょう。
また、予約や「いつもの薬」をオンラインで全て申し込めるシステムのある診療所と、電話する必要のある診療所があります。ウェブサイトなどで確認しましょう。
TIP2
かかりつけ医も全員何らかの専門性を持っています。
特に気になる持病や部位があれば、専門の医師がいる診療所に登録するとより安心です。
新規患者の受け入れの可否を尋ねる際に訊けば教えてくれます。
病歴メモの作成のお手伝い依頼、手続きの不明点に関するご質問など、お気軽にGoodwillにお問い合わせください!
- Huisarts(蘭)…ホームドクター、開業医、かかりつけ医
- inschrijven(蘭)…登録
“Hello, my name is XX. I recently moved to this area, and I am looking for a family doctor to register with. Does your clinic currently have openings for new patients?”
(〇〇という者です。最近この地域に引っ越してきてホームドクターを探しているのですが、そちらの医院は現在新規患者を受け入れる空きがありますか?)
“I have a chronic heart condition, and I am looking for a family doctor who specializes in cardiology.”
(心臓に持病があり、循環器系が専門のホームドクターを探しています)
“I have decided to change my family doctor for convenience. Could you advise me on what procedures I should follow?”
(利便性のためにかかりつけ医を変更することにしました。どんな手続きを取ったらいいでしょうか)
(文:Goodwillメンバー ウルセム幸子)
ホームドクターへの登録も「至難の業」?!
前回、『オランダのかかりつけ医で定番!「パラセタモール」とは?』にてお話しした様に、オランダの医療システムにおいてホームドクター(huisarts)は「門番」として非常に重要な役割を果たしています。
彼らは初期診療を提供し、必要に応じてふさわしい専門医に患者を紹介します。
このシステムによって、軽症の患者で総合病院が手いっぱいにならないようになっているのです。
しかし近年、ホームドクター不足や登録待ち患者の増加が問題となっており、かかりつけ医に登録したくてもできない人も増えています。
NIVEL(オランダ一次医療研究所)によれば、現在オランダの人口約17.5万人に対してホームドクターは13,942人活動しており、つまり1人の医師あたり平均約1,255人の患者を担当していることになります。
通常の診療所は約2,500人の患者を担当するキャパシティがあるとされているので、医師の数としては十分足りているはずですが…なぜ待機リストなどできてしまうのでしょうか?
過去10年間でオランダの医療をめぐる状況は大きく変化しました。
2012年には67%のホームドクターが自身の診療所を持っていましたが、2023年にはその割合が47%に減少しています。
代わりにフリーランスの医師が増えて、必要に応じて短期で(オーナー医師の病休代替などで)働く人が増えています。
結果として診療所の数は少しも増えていないのに、高齢化に伴い患者数は増加するという現象が起きており、要するに需要の増加に医療サービスの供給が追い付いていないという状態になっているのです。
かかりつけ医になかなか登録できないときは、どうすべきでしょうか。
考えられる対策はいくつかあります。
1.「通りすがりの人診療」
緊急の場合は、どこでもいいので行きやすい診療所に連絡して(Zorgkaartなどで探しましょう)、登録なしでコンサルテーションを受ける予約ができるか訊いてみましょう。
受付の助手が緊急と判断すれば、旅行者などと同様に登録なしで「通りすがりの人診察」(passanten consultatie)が受けられる場合があります。
この場合特別診察料がかかり、受診時にいったん自己負担(診察にかかった分数により、2024年現在5分以内€17.96~20分以上€71.83)する場合もありますが、後日保険会社に請求すれば多くの場合返金されます。
医院によっては複数回この診察を受けた人には登録がどうなっているのか尋ねたり、「〇回まで」と決めてあったりとあまり歓迎される受診方法ではありませんが、努力しているのにどこにも登録できていない場合は恐縮する必要はありません。「こっちだってかかりつけ医ほしいわ」というメンタリティで行きましょう。
2. HAP(緊急外来)
通常の診療時間外に急な症状が出た場合は、地域の緊急外来診療所であるHuisartsenpost(HAP)を利用できます。
ただしHAPでは治療後のフォローアップをしてもらえませんし、予約を取るのも大変です。
またHAPは夜間と週末のみの診療となり、一般のかかりつけ医院に日中予約を取って行った場合よりも待ち時間が長くなることが多いため、熱があったりどうしても具合が悪い時に行く場にしては尋常でない忍耐が必要とされます。
また時間外診療扱いとなるため、上記の登録なし診療同様診察料も割高ですが、多くの場合保険会社から返金してもらえます。
3.健康なうちに医師を見つけるには
健康なうちにいいホームドクターを見つけて登録できたらそれが一番いいのですが、どうしても空きがある医院が見つからない場合は、健康保険会社の仲介サービス(zorg/wachtlijstbemiddeling)を利用するのも手です。
実は保険会社には加入者が医療ケアを受けられるようにサポートする法的義務があるのです。
このサービスを申し込む際には、それまでに問い合わせたけれど受け入れてもらえなかった医院のリストやEメールのコピーなどを保険会社に共有すると、効率よく探してもらえるのでおすすめです。
(文:Goodwill代表 タナカケン)
(訳:Goodwillメンバー ウルセム幸子)
- 文:Goodwill代表 タナカケン
- 文・訳:Goodwillメンバー ウルセム幸子
- イラスト作画:Goodwillメンバー 半田 智穂
- WEBデザイン・編集:チューリップデザイン